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もう一度状況を確認した
<旅行記>
 
今回のお話は、もうかれこれ7年前、大学受験の帰り道中の出来事である。時は、2月中旬のことだった。
交通費を安くあげたかった私は、東京から福岡へ帰るのに高速バスを使うことにした。時間は15時間ほどかかるものの、路線バスとしては日本一の豪華設備と言われるほどの充実さを誇るシロモノで、しかも\15,000で福岡まで行けるのは、ヒマな私には十分に魅力的だった。
夜行バスというもの自体に乗るのが初めてだった私は、はやる気持ちを抑えながら、出発場所である新宿高速バスターミナルへ向かったものだ。
そして、19:45の出発時間を迎え、私はもの珍しさに目を見はりつつも、1人の車中の人となっていた。


バスは中央道をひた走っていた。山梨・長野・岐阜の3県を経由して名古屋より名神道に入るルートをこれから取ってゆく。中央道はほどよく空いており、甲州時のゆるやかな坂道を駆け抜けるように進んでいった。
最初の休憩場所である、諏訪湖SAを過ぎるとやがて消灯。各座席ごとにカーテンの仕切が設けられ、車内も静けさを増していった。やがて、私も夢の中へと吸い込まれていくようであった。

ふと気が付くと、バスは止まっていた。しかも、真夜中の高速道路上で。???と思って前を見てみると、何と渋滞しているではないか。恐らく、事故か何かで高速が通行止めになっているらしい。しかも、ちっとも動かないところをみると、生半可な事故でもなさそうである。
この状況では2,3時間の遅れは覚悟せねばならない、と一瞬思ったが、受験の疲れのせいか、ともかく眠たくもあり、気が付けばまた私は夢の中にいた。

再び目が覚めると、既に空は明るみかけていて、今度はバスは動いたのだが、どうも様子がおかしい。と、よく見たら外はなぜか白っぽい。前には赤いランプが青く変わってゆくものが見える。
な、なに? これ信号機? ここ一般道? 白いのってなんだ???
一瞬私のアタマは混乱したが、恐らく受験も終わったばかりだし、疲れているんだろう、という結論に達した。たぶん、外の景色を夢の中のものと取り違えたにちがいない。と、すれば、それってすごくヤバい・・・
いかん、いかん、やっぱり何か疲れてる。ともかく寝よう。そうつぶやきながら、私は再びシートにもたれた。


こんどの眠りはどうやら深かったらしい。朝を迎え、何やら運転士のアナウンスやらテレビの声などが聞こえたが、どうせありきたりの案内だろうと思い、夢うつつのまま聞き流してまた眠ってしまった。どうせ福岡に着くまでにはまだまだ時間はあることだろう。あれこれ考えてもどうしようもない、という思いがあったのかもしれない。

眠るのにも飽き、起き出して時計をみると、10時前ほどだった。もうそろそろ30分ほどで、福岡へ着くはずである。現地点をを確認すべく、窓の外を見た。
当たり前だが、夜はすっかり明けており・・・・「ふ、ふぇ?・・・・」

外は一面の銀世界だった。何度も自分の意識がはっきりしていることを確認し、目をこらしたが、遠くの山々まで見事に雪で埋め尽くされているのがわかった。夢はこんなにリアルではない。一体、何が起こったというのか。
そ、そうだ! 私は青森行きのバスに間違って乗ったのだ。それなら辻褄が合う・・・って、そんなハズもなく、だいたい青森行きのバスの運ちゃんが博多弁でアナウンスなんかするものか。
しかも、バスは一般道で止まっているではないか。一体どうしたことか。そもそも、ここはドコなんだ! わ、わかった! このバスは何者かによってジャックされ、北へ向かって逃走中なんだ・・・て、それも何か変だ。


私は一気に目が覚めた。そして、大いに混乱した。もう一度状況を確認した。私は、明らかに今福岡行きのバスの中にいる。そして、今は午前10時。定時ならばあと30分で福岡に着く時間だ。外は一面の銀世界。そして、山の中。バスは一般道で止まっている。ここがどこだかはわからない。さあ、どうする。
どうするったって、どうしようもない。そもそも、このバスは休憩以外、東京−福岡間ノンストップ。福岡に着くまでどうにもならない。
と、気がつくと、この道の反対車線の車の流れは良いことがわかった。そこで、あることを思いつき、そちらへ目を凝らした。そう、対向車のナンバープレートでどの辺の位置か確認しようか試みたのである。

が、その結果は目を丸くせざるを得ないものだった。
「岐阜ナンバー」「名古屋ナンバー」「岐阜」「岐阜」「名古屋」「岐阜」・・・
「・・・・・・・」 
「・・・・・・・・・・」 
「・・・・・・・・・・・・・」
まだ、東京から福岡までの3分の1しか進んでないじゃねーか!!!

もう一度状況を確認した。私は、明らかに今福岡行きのバスの中にいる。そして、今は午前10時過ぎ。定時ならばあと30分弱で福岡に着く時間だ。外は一面の銀世界。そして、山の中。バスは一般道で止まっている。ここは恐らく岐阜県の山奥で、名古屋に近い・・・
この時、私は今置かれている状況が相当にとんでもないということを理解した。

ほどなく、バス備え付けのテレビからNHKのニュースが放映され、全容が明らかになる。
「昨夜から、関西地方より中部地方一帯に降り続けけていた大雪は、ようやく勢力を弱め・・・
 高速道路は東名・名神・中央道共に不通で、現在除雪作業中・・・
 その影響で、国道一号線は関ヶ原付近を先頭に約30kmの渋滞・・・」


・・・もう一度状況を確認した。
私は、明らかに今福岡行きのバスの中にいる。そして、今は午前10時過ぎ。定時ならばもう福岡に着いている時間だ。外は一面の銀世界。そして、山の中。バスは一般道で止まっている。ここは岐阜県の関ヶ原。福岡まであと800kmほど。ただ今、一般道で渋滞中・・・

どーすんだよ!!! いつになったらウチに帰れるんだっっっ!!!!!



追伸 福岡にはそのさらに翌日の未明、到着した...



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